Last Kiss # Information

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　日が沈み、辺りが徐々に闇に包まれていく。土地柄、昼でも夕方のような色合いのダングレストも、夜だけは他の地域同様、闇に染まる。それでもギルドの町と呼ばれるだけあって、静寂とは無縁である。今日も酒場を中心に町は賑わっていた。
「お疲れさま―」
　カロルが高らかにグラスを掲げ、乾杯の音頭を取った。同じテーブルについていたユーリ、ジュディス、パティも倣ってグラスを掲げる。
　周囲では彼ら同様、仕事を終えた他のギルドの面々が思い思いに騒いでいる。そんな活気のある店内を眺めながら、ユーリはグラスを傾けた。
（ん……？）
　ふと、視界の端に見知った人物が見え、ユーリは視線を止めた。わらわらと人の行き来がある中、目が合うと、彼はにっと笑って口元に人差し指を当てた。そうしてそろそろとこちらに近づいてくる。ユーリは彼の意図に気づいて、小さく息を吐いた。
「今回もばっちりだったね！」
　テーブルの上に並んだ料理に手を伸ばしながら、カロルがにっこりと笑う。そのまま、手に取って口に運ぼうとするが、横から出てきた手によって料理があらぬ方向へと動いた。えっ、とカロルが首を捻って斜め後ろへと顔を向ける。
「頑張ってるじゃないの少年たち」
「レイヴン！」
　カロルの手を掴んだレイヴンがにっと笑って、料理を口にする。不意打ち成功と言わんばかりの笑みに、ユーリはやれやれと息を吐いた。
「あ、僕のっ」
　レイヴンはしゅんとなるカロルの頭を軽く撫でて、当たり前のように空いている席に腰を下ろした。
「相変わらず綺麗ねージュディスちゃん」
「あら、褒めたって何も出ないわよ」
　クスリとジュディスが笑う。その隣でパティが嘆息交じりに呟いた。
「おっさんも相変わらずじゃの」
「まー、パティちゃんてば失礼ね。って、あれどしてパティちゃんがここに居るわけ？」
「仕事の手伝いじゃ。ユーリ達の頼みをうちが断るわけなかろう」
　胸を張るパティにレイヴンも同意を示す。ほのぼのとした空気が流れる中、ユーリはグラスをテーブルに下ろした。
「で、おっさんはこんなところで何やってんだ」
「青年、食事時に酒場に居てその質問は愚問でしょ」
　レイヴンの返答に、ユーリはふっと意地悪そうに口端を上げて笑った。
「そりゃそうだ。じゃ、今日はおっさんの奢りってことで」
「ちょっ、青年！　それはないんじゃないの」
　さすがにレイヴンが抗議の声を上げるが、ユーリはさらりと聞き流す。
「うちのボスをからかってくれた分だ。たまにはいいだろ」
　ふっと笑いかけると、レイヴンはしばし呻いた後、顔を覆った。あからさまな泣き真似だ。
「ひどい、青年ったらひどいわ。おっさんさっき戻ってきたばっかりなのに、もうちょっと労ってくれてもいいじゃない!?」
「戻ってきたって……レイヴンどっか行ってたの？」
　それまでしゅんとしていたカロルが、レイヴンの言葉に顔を上げる。突っ込まれたレイヴンは一瞬躊躇いを見せた後、歯切れ悪く答えた。
「んー、ちょっとザーフィアスにねー」
「あ、もしかして騎士団の仕事？」
　レイヴンが曖昧な笑みを浮かべる。言わずともその反応でカロルの言葉を肯定していることが見て取れた。
カロルが深々と息を吐く。
「ギルドのNo.２と騎士団の隊長かぁ……ほんとレイヴンって見かけによらずすごいよねー」
「ちょっと、カロルくん。見かけによらずってどういうことよ」
「そのまんまの意味だろ」
　半眼で不服そうなレイヴンに、ユーリは即座に突っ込んだ。

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